本山国泰寺花まつり

令和6年5月8日11:00

●花まつりについて●

『花まつり』と聞いて、どのような行事であるのかすぐに分からない人もいるでしょう。しかし、日本人にかかわりの深い仏教にまつわる歴史の深い行事なのです。仏教は、数ある宗教の中でも日本人にとっては最も身近に感じられるものでしょう。仏教において、花まつりはお釈迦様と深く関係する行事なのです。
『花まつり』とは、お釈迦様の誕生日を祝うため、全国の寺院で催される行事です。たいていは4月8日ですが、旧暦の4月8日や、あるいは5月8日に行う地域もあります。
花まつりという呼び名が定着しましたが、正式名称は『灌仏会(かんぶつえ)』です。また、浴仏会(よくぶつえ)、仏生会(ぶっしょうえ)、竜華会(りゅうげえ)などの別名もあります。
このように呼び名がたくさんあるのは、仏教にも宗派があるからです。宗派を問わず使える花まつりという呼称が、今ではこの行事を代表する名前になっています。
この花まつりは、仏教を建学の精神に掲げる幼稚園や学校の行事に取り入れているケースもあります。そのため、お寺以外でも花まつりに触れたことがある人もいるでしょう。
お釈迦様が生まれたのは、今から2500年前といわれています。現在のネパールの南部にあった町・ルンビニの花園で、当時国家を形成していたシャーキャ族の王子として誕生しました。
王のシュッドーダナと、王妃のマーヤーの間に生まれた赤子は『シッダールタ』と名付けられ、王子として何不自由なく育てられたと伝わっています。ところがシッダールタは成長するにつれ、人生の真実や無情、苦悩などに思いを巡らし、29歳になるとその地位をすべて捨てて出家します。その後、悟りを開いてブッダとなり、教えを広めたとされます。灌仏会はこのお釈迦様の誕生を祝い法要を営む行事で、日本で灌仏会が初めて行われたのは606年、推古天皇の時代で、大和の元興寺(がんこうじ)で行われたといわれています。
花まつりが行われる花御堂(はなみどう)とは、無数の花で飾りつけた小さなお堂です。お釈迦様が生まれたルンビニの花園をイメージしています。お寺の境内に花御堂を設え、たらい型の灌仏桶を甘茶で満たします。そして、その中央に誕生仏を安置するのです。
お釈迦様は、生まれてすぐに東西南北に7歩ずつ歩き、右手は天を、左手は地を指し「天上天下唯我独尊」と唱えたといいます。誕生仏のポーズは、その時の姿勢です。参拝者は、安置された誕生仏に、竹の杓で灌仏桶からすくった『甘茶』をかけます。それが、お釈迦様の誕生日を祝うための行為です。灌仏会の灌は、水を注ぐという意味です。花まつりに欠かせない甘茶は、ヤマアジサイの変種で、ユキノシタ科の植物『アマチャ』の若葉を煎じた飲み物です。
甘茶は生薬としても知られ、無病息災をもたらす効果もあると信じられてきました。多くの寺院では、誕生仏にかけるためのものの他、飲み物としても参詣者に甘茶を配ります。花まつりで、花御堂に安置された誕生仏に灌仏桶からすくった甘茶をかけるのは、なぜなのでしょうか。
お釈迦様が生まれたとき、天から九頭の龍があらわれました。そして、お釈迦様の頭から甘露の雨を注いだという言い伝えに基づいています。
その雨がシッダールタ(お釈迦様が生まれたときに付けられた名前)を清め、悟りの道へと導いたと信じられていることから、無病息災にもつながる甘茶をかけるようになったようです。

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